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薬剤耐性-AMR-について

100年後の人類の健康を願って
~薬剤耐性(AMR)対策について~

熱海市医師会 学術委員会

 生物の体内に細菌などの病原菌が入ると、感染症と呼ばれる病気を引き起こし、時に死に至ります。細菌に対する人類の反撃は、1929年イギリスのアレクサンダー・フレミングが世界初の抗生物質(抗菌剤)ペニシリンを発見したことにより始まりました。抗菌剤の発見で、細菌による感染症は100%制圧できるのでないかと期待もありましたが、その期待とは裏腹に、細菌は様々な方法で抵抗力を身につけ、抗菌剤が効かない菌に変化していきます。これを薬剤耐性(AMR)と呼びます。
 耐性菌をやっつけるために新しい抗菌剤を作ると、追うようにして菌もまた新しい耐性を獲得する。このような“いたちごっこ”を今日まで繰り返してきました。そして、それに輪をかけて状況を悪くさせたのが抗菌剤の乱用です。
 これまで効果が無いと分かっている風邪などの疾患に対しても安易に抗菌剤使ってきました。患者さんは予防や安心のために抗菌剤を欲しがり、医師もまたその要望のまま安易に使いました。この使い方が「抗菌剤を使うほど耐性菌も生まれる」という悪循環を助長させる結果を招きました。その結果、最近は新しい抗菌剤の開発が困難となり、私たちは細菌との戦いに敗れつつあるのです。
 このままでは薬剤耐性菌の感染症による死亡者数が、将来、がんや血管障害を上回るのではないかと危惧されています。

 今、人は戦う方法を考えねばならない状況に直面しています。平成27(2015)年5月の世界保健総会では、薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プランが採択され、加盟各国は2年以内に薬剤耐性に関する国家行動計画を策定することを求められました。これを受け、わが国では、平成28(2016)年4月「薬剤耐性対策アクションプラン」がとりまとめられました。

 熱海市医師会では「薬剤耐性菌(AMR)対策」の啓蒙活動に力を注いています。そしてホームページに掲載することにしました。医療機関に受診した時に「抗菌剤はだしません」と言われたら、その先生は皆様の事、そして世界の将来の事を心配している先生なのだとご理解ください。風邪に抗菌剤は効きません。しかし抗菌剤が必要な例ではしっかり使わなければなりません。その判断は主治医にお任せください。ご理解、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。